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大阪地方裁判所 昭和43年(ワ)4757号 判決

原告

石間明

被告

松下信一

ほか一名

主文

1  被告らは各自原告に対し金四七五万三、五五五円と、内金四一五万三、五五五円に対する昭和四三年八月二五日から、残金六〇万円に対する昭和四四年一〇月三一日から右各支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払うこと。

2  原告その余の請求を棄却する。

3  訴訟費用はこれを五分し、その三を原告の、その余を被告らの負担とする。

4  この判決の第一項は仮りに執行することができる。

5  但し、被告らにおいて連帯して原告に対し金四〇〇万円の担保を供するときは右仮執行を免れることができる。

事実

第一申立

(原告)

「被告らは各自、原告に対し、金九六六万八、四三〇円およびこれに対する昭和四三年八月二五日(本訴状送達の日の翌日)から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え、訴訟費用は被告らの負担とする。」との判決ならびに仮執行の宣言

(被告ら)

「原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とする。」との判決

第二主張

(原告の請求原因)

一、本件交通事故の発生

発生時 昭和四二年一〇月一五日午後一時五分頃

発生地 大阪府泉南郡岬町深日大町一、二五二番地先国道二五号線上

事故車 小型貨物自動車(泉四の四、七六七)

運転者 被告松下信一

被害者 原告(当時五七才)

態様 右国道東側を、第一種原動機付自転車に乗り時速約二〇キロメートルで南進していた原告に、対向方向より右国道西側を北進してきた事故車がセンターラインを越えて国道東側に侵入したうえ、衝突した。

二、被告らの責任原因

1 被告信一

被告信一は、一般に車輛を運転する場合、道路の中心から左の部分を進行すべき義務があるのに、これを怠り、センターラインを越えて事故車を道路の右側(東側)に侵入させた過失により本件事故を発生せしめたのであるから、民法七〇九条により、原告に対し後記損害を賠償する義務がある。

2 被告育正

被告育正は、本件事故車の保有者であり、これを運行の用に供していたのであるから自賠法三条により、原告に対し、後記損害を賠償する義務がある。

三、原告の傷害

1 傷害の内容

頭部打撲、左膝内障、左腓骨小頭亀裂骨折、右脛骨上端骨折、右腓骨小頭骨折、右膝蓋骨々折、腰部打撲、右肩打撲、頸椎骨転骨症等。

2 医療の経過

イ 昭和四二年一〇月一五日(事故の日)から同年一二月八日まで泉南郡東鳥取町公立尾崎病院に五四日間入院。

ロ 同年一二月八日から翌四三年三月三一日まで

和歌山市本町堀口整形外科病院に一二四日間入院。

ハ 同年四月一日から同年六月一一日まで

右病院に週二回の割合で七二日の間通院。

ニ 同年六月一二日から同月二〇日まで

右病院に再び八日間入院して、腰椎麻酔下に右膝関節部抜釘術をうける。退院後もなお三ケ月の通院加療を要する見込とのことで、現在も引続き同病院に通院中である。

3 後遺症

右のごとく、治療につとめてきたが、依然として頭の右半分と右肩と右腕とが麻痺して、いずれも重くかつ時々痛む。

右耳難聴。両足が痛み、殊に歩行時に苦痛を覚えるため歩行は不自由である。前記堀口整形外科病院の担当医師は昭和四三年六月二二日「今後約三ケ月の通院加療を要する見込みであるが、右膝関節の機能障害、右頸上肢の神経症状の後遺症を残す見込み」と診断しており、原告の前記後遺症は、今日では殆んど固定化し、全治の可能性は到底望まれない。

四、損害額 総額九六六万八、四三〇円

1 医療並びに医療に関する費用の未払分 計三九万五、四一五円

イ 九、八六〇円

右は、昭和四二年一二月八日堀口整形外科病院に入院する際の救急自動車代。

ロ 三七万九、七七五円

右は、昭和四三年二月一日より同年六月一日までの右病院での治療費未払分。

ハ 五、七八〇円

右は、昭和四三年四月一日から同年七月まで、原告が治療のために和歌山まで通院した際の電車賃(一往復一七〇円、三二回分)と妻が看病のため往復した際の電車賃(同二回分)。

2 逸失利益 四三六万六、八〇〇円

原告は、前記のとおり、事故当時五七才であつたが、一八才の頃から三九年間終始土建労働者として筋肉労働一筋に生きて来たもので、昭和四二年八月一日から本件事故当時まで、土木建築業を営む岬工務店こと宮川信一方に、現場世話役として勤務し、常に土木工事現場を見廻りつつ、土工達を指導鼓舞し、あるいは必要に応じ現場で土工らと共に自らも工事に従事しながら、一ケ月六万円の給料を支給されていた。しかるに、本件事故により、前述のとおりほとんど右半身不随(麻痺)となり、筋肉労働に従事することは不可能となつたため、以後従来からの収入の道を失うに至つた。

仮に、本件受傷がなければ、原告はなお八・六年間は稼動することができたと考えられるので、前記収入より月一万の割合による生活費を控除したうえで、この間の得べかりし利益を計算すると四三六万六、八〇〇円になる。

3 慰藉料 四〇〇万円

原告は何等の過失なくして叙上の如き頻死の重傷を蒙つた。これによる原告の心身の苦痛たるや実に言語に絶し、かつ、その苦痛は今後終生続くであろう。原告はこれが治療に人事をつくしたが、前述のごとき後遺症を残すに至り、もはや従前の労働能力を完全に喪失するに至つた。元来、他に何ら取柄のない原告としては、今後筋肉労働の喜びと、これにより生きてゆく望みとを失い、日夜悲歎にあけくれている状態である。

4 原動機付自転車の破損による損害 三万七、〇〇〇円

右の事故により、原告の乗つていた原動機付自転車が破損し、これが修理のために右金額を必要とする。

5 弁護士費用 八六万九、二一五円

原告は本件訴訟の提起を弁護士に依頼し、取立額の二割を報酬として支払う旨契約した。そのうちの一割を請求する。

(請求原因に対する被告らの答弁)

一、請求原因第一項(本件事故の発生)はその態様を除き認める。

事故態様は否認する。

二、同第二項(責任原因)中、その1(被告信一の過失)は否認しその2(被告育正の運行供用者責任)は認める。

三、同第三項(原告の傷害)中、その1(傷害の内容)と、その2(医療の経過)のイ、ロ、ハ、は認める。同2のニは不知。同3(後遺症)は否認する。

四、同第四項(損害額)の事実は否認する。その請求額は、いずれも過当である。

特に、その2(逸失利益)について、原告が岬工務店に勤務したのは、昭和四二年一〇月一日からであり、事故発生までに、僅か半月働いたにすぎないし、同人がそれまで土建工として職場を転々としている間に得ていた給料は、その主張する六万円よりはるかに低いので、仮に岬工務店より月六万円の給料を受取る約定があつたとしても、これを基礎に将来の得べかりし利益を主張することは肯認し難い。又、その労働の実態よりして、稼動可能年限の主張も過当である。

又、その1(医療費等未払分)のロ(堀口整形外科病院に対する治療費未払分)は、被告らが、同病院に対し直接に支払義務を負担しているものであるから、原告に請求されるいわれはない。

(被告の抗弁)

一、過失相殺

本件事故の発生については、原告にも以下のごとく前方不注視の過失が認められるから、損害額の算定につき斟酌されるべきである。

すなわち、当時、原告の原付車はゆつくり走行していたのであるから、原告が前方をよく注視してさえおれば、誤つて原告の進路に進入してきた事故車を相当距離前に発見し得て、原付車を停車して衝突を避け得たであろうと推認され、結局本件事故発生につき、原告に前方不注視の過失が存することは明らかである。

二、弁済

1 請求原因第四項の1のイ(救急自動車代)は昭和四二年一二月一一日原告に対して支払つた。

2 請求原因第四項の1のロ(堀口整形外科病院に対する治療費未払分)のうち六万円は、本訴提起後、被告らから同病院に対して直接支払つた。

3 被告らは、原告の傷害につき、入院費、治療費を一切負担した外、昭和四二年一〇月二六日から翌四三年九月六日までの間に、一三回にわたり、総計四七万二、〇〇〇円を原告に対し生活費の一時立替金あるいは借用金名義で、損害金の内払いとして支払つた。

(抗弁に対する原告の答弁)

一、抗弁の第一項(過失相殺)中、原告に過失があるとの主張は否認する。

二、同第二項(弁済)の事実はいずれも認める。

第三証拠〔略〕

理由

第四理由

一、本件交通事故の発生

右については、事故の態様の点を除き、当事者間に争いがない。

二、事故の態様ならびに被告信一の過失

1  〔証拠略〕を総合すれば、次の事実が認められる。

イ  本件事故現場は、南北にのびる幅員七メートルの国道二六号線が、大阪方面(北)にむかつて左側にゆるやかにカーブしている見通しのよい平担な場所である。

ロ  被告信一は、右国道を事故車を運転して大阪方面にむかつて時速約四五キロで北進してきたが、事故現場の手前一〇〇メートル程のところにさしかかつたとき、いねむりをしてハンドル操作をゆるがせにしたため、事故車が前記カーブを十分に曲がり切らずにセンターラインを越えて南行車線に進入し、おりから南行車線東端を時速約二五キロ位で対向してきた原告運転の原動機付自転車の前部に正面衝突し、これを原告もろとも道路わきの畑の中に揆ね飛ばし、原告を負傷させ、原動機付自転車を破損した。

2  右認定事実によれば、本件事故は、被告信一が、ねむけを覚えて正常な運転ができない状態に陥りながら、直ちに運転を中止してその消失を待つべき注意義務を怠り、そのままいねむり運転を継続した過失によつて惹起したものというべきである。

三、責任原因

1  被告信一は、右のごとく、過失により本件事故を惹起したのであるから、民法七〇九条により、原告に対し後記損害を賠償する義務がある。

2  被告育正が事故車の保有者であることは当事者間に争いがなく、同被告は自賠法三条により、原告に対し後記損害を賠償する義務がある。

四、本件事故による原告の傷害等

1  本件事故による原告の傷害の内容及び事故後昭和四三年六月一一日までの治療の経過、入通院日数等(請求原因第三項1、2のイないしハ)については当事者間に争いがない。

2  〔証拠略〕を総合すれば、原告の、右六月一一日以降の治療経過および後遺症状に関して、

イ  昭和四三年六月一二日から二〇日まで八日間、原告は再び堀口整形外科病院に入院し、右膝関節形成手術後の抜釘術を受けたこと。

ロ  右退院時、原告は尚三ケ月間の通院加療を要するとの診断をうけたが、現実には、翌年三月頃までは週二回、その後は週一、二回の割で不定期に、右病院に通院して治療を受けたこと。

ハ  右通院当時、原告は主に頭痛、頸痛、右上肢の痺れ等を訴えており、同病院主治医は、これに対し上肢の痺れの箇所に注射し、低周波療法を行い、あるいは頸椎を牽引する等の治療を行つていたこと。

ニ  右の頭痛、頸痛、上肢の痺れ、あるいはその後原告の訴える握力の低下、肩のこり等の神経症状については、医学上必ずしも本件事故による傷害に由来するものとは断定し難いこと。

ホ  右のような症状の外、本件事故による右膝関節骨折、左腓骨小頭骨折等に原因することが明らかな後遺障害として、右膝屈折が九〇度に、左膝屈折が四〇度に制限されており、原告はこれがために第五級の身体障害者に認定されており、従来のような肉体労働は不可能となつていること。

が認められ、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。

五、損害額

原告は、本件事故によつて、以下1ないし5の損害、合計五二二万五、五五五円を受けたことが明らかである。

1  医療費ならびに医療関係費 小計 三二万五、五五五円

イ  救急自動車代(請求原因四の1のイ) 〇円

右については、被告がすでにこれを原告に対し弁済したとの抗弁(抗弁二のイ)に争いがないので、支払義務はない。

ロ  未払治療費(前同1のロ) 三一万九、七七五円

右について、〔証拠略〕を総合すれば、昭和四三年二月一日から、同年七月三一日までの堀口整形外科病院における治療費三七万九、七七五円のうち、その後被告らが直接病院に対して支払つたことに争いのない六万円(抗弁二のロ)を除いた残額三一万九、七七五円が未払いとなつていることが認められる。被告らは、右未払金は、被告らが直接右病院に対して負担している債務であり原告に請求されるいわれはない旨主張するが(答弁四)、一般に治療費は、患者と病院(医師)との医療行為に関する準委任契約に基づき、患者が病院に対して直接負担するのが通常であり、交通事故の加害者側においてこれを免責的に引受けるには、その旨の三当事者による、若しくは病院と加害者側とによる契約か、又は患者と加害者側の契約に対する病院の承認を要するものと解され、かかる場合のみ、患者は治療費支払義務を免れることができ、損害額から排除されるものと解すべきである。ところで、〔証拠略〕によると、被告らが、原告に対し原告入院の当初、治療費は全額被告らにおいて負担することを約し、右未払金の他の治療費を直接前記病院に支払つてきた事実が認められるけれども、これを越えて、原・被告らと右病院との間、若しくは被告らと右病院との間に免責的債務引受契約が締結されたことを認めるに足る証拠はなく、〔証拠略〕によれば、右未払金につき同病院において原告に対しその支払を請求していることが認められるところから、同病院において原告の支払債務を免責させる如き承諾を与えたものとは認め難く、他にこれを認めるに足る証拠はない。されば、原・被告ら間の右約束は単なる履行の引受程度のものに過ぎないといわざるを得ず、結局右未払治療費は患者である原告が堀口整形外科病院に対して直接負担しているものというべきである。それ故、右未払金は本件事故により原告のこおむつた損害であるといわなければならない。被告らの前記主張は採用の限りでない。

ハ  通院のための電車代(前同1のハ) 五、七八〇円

右については、先に認定した治療経過および甲八号証を総合して原告主張のとおり認められる。

2  逸失利益 二八〇万円

イ  〔証拠略〕を総合すると、次の事実が認められる。

原告は、昭和四二年八月中頃より土木建築業を営む岬工務店こと宮川信一方に工事現場の世話役として勤務し、土木工事現場を見廻り土工達を指導し、あるいは一緒に現場仕事をしながら、同年八月(一一日稼働)二万二、〇〇〇円、九月六万円、一〇月(一五日稼働)三万五、〇〇〇円の賃金を得ていた。

原告は、従来土建工として土木工事現場を渡りあるいており、右岬工務店の前には、同じく泉南郡岬町の泉南建設株式会社の現場で臨時工として働き、同年六月四万七、〇〇〇円、七月四万五、〇〇〇円、八月(一九日稼働)三万三、〇〇〇円の賃金を得、その前には岬町役場の土木工事現場で臨時職員として働き、同年一月三万九、〇〇〇円、二月三万六、四〇〇円、三月三万九、〇〇〇円、四月三万七、八四〇円(退職金を含む)の賃金を得ていた。

以上の認定事実によると、原告の得べかりし利益を算定するについて、たまたま事故当時得ていた一ケ月六万円の収入を基準とすることは、必ずしも適当ではないが、右のうち、一ケ月分の収入が明らかな四二年一ないし三月、六ないし九月の賃金の平均は四万五、九〇〇余円となり、その他、前掲証拠によれば原告は極めて頑健であつたと認められること、近来の土建労働者の賃金水準等を総合して考えると、原告は土建工として、ひかえ目に見ても一ケ月あたり平均して四万五、〇〇〇円の賃金を得ることができたものと認められる。

ロ  ところで、原告は本件事故により前記のごとき後遺障害を残すこととなり、従来からの右肉体労働による収入をすべて失うに至つたものであるが、仮に本件事故がなければ、その健康状態、年令、経歴、等からして、この時よりなお六年間は、前記収入を得ることができたものと認められる。

ハ  従つて、原告の得べかりし利益を、月ごとホフマン方式によつて年五分の割合による中間利息を控除して算出すると二八〇万円となる。(この場合生活費を控除する必要はない。)

尚、右各認定は極めて大まかな推論の上になりたたざるを得ないことを考えると、算術的な計算の結果のうち、上二桁(一〇万円)未満の数値は、本件証拠に対する必然性あるいは有意性を持たないので、これを切捨てる。

45,000×62.8522=2,828,349(円)

3  慰藉料 一五〇万円

前記認定にかかる原告の傷害の内容、六ケ月余に及ぶ入院及び週二回の通院等の治療の経過、ならびに後遺障害の内容等本件証拠上認められる諸般の事情を考慮して、原告に対する慰藉料として一五〇万円を相当と認める。

4  原動機付自転車の破損による損害

原告本人は右について、修理業者に右破損原付車の修理には三万七、〇〇〇円かかると見積られた旨を供述するが、現実には、修理をせず乗れないままに放置してあるというのであり、現実の修理費の支出によりその損害を認定することもできず、又右見積りの客観性を証するに足る証拠もない。他方、右原付車の事故前における交換価値を証する証拠も存在せず、結局、右原付車破損による損害を算定することはできない。

5  弁護士費用 六〇万円

〔証拠略〕を総合すると、原告は本件事故による前記損害の賠償を得るために、法律扶助協会に依頼して本訴を提起することを余儀なくされたこと、同協会との間に同協会が訴訟費用並びに手数料として立替えた金四万円および取立額の二割以内を謝金として、本訴終了後、同協会に対して支払う旨を契約したことが認められる。右事実に、本件訴訟の経過、認容額並びに当裁判所に顕著な日本弁護士連合会報酬規定、交通事件における法律扶助審査委員会の報酬額決定の実態等を案すると、本件訴訟における弁護士費用中、本件事故による損害として被告において負担すべきものは金六〇万円と認めるのが相当である。

六、過失相殺に関する認定

〔証拠略〕を総合すれば、本件正面衝突事故の直前、原告自身も、必ずしも前方を十分注視していなかつたことが認められるが、前記(理由第二項)認定のごとく、本件事故は、被告信一がいねむりをしていてカーブをまがり切れずにセンターラインをオーバーして対向車線に侵入し、対向車線左端を進行してきた原告運転の原動機付自転車に正面衝突したというのであり、事故車が衝突地点の相当手前からセンターラインをオーバーして進行してきたものと認めることはできず、かつ又、本件証拠上分明では無いのであるが、仮に本件事故においても原告に衝突をさけるための若干の余地が残されていたとしても、右事故態様に照らすならば、これをとらえて、過失相殺に値すべき原告の過失と評価することはできず、この点に関する被告らの主張は採用のかぎりでない。

七、損害の弁済

前々項認定の原告の損害に対し、四七万二、〇〇〇円がすでに支払われていること(抗弁二のハ)は当事者間に争いがない。

よつて、右金額は前記損害額から控除する。(弁済に対する他の抗弁についてはすでに損害の項で認定した。)

八、結論

被告らは、原告に対し各自金四七五万三、五五五円と、内金四一五万三、五五五円に対する昭和四三年八月二五日から、残金六〇万円(弁護士費用)に対する昭和四四年一〇月三一日(本判決言渡日)から各支払ずみに至るまで年五分の割合による遅延損害金を支払わなければならない。

よつて、原告の本訴請求は右の限度でこれを認容し、その余は棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二、九三条、仮執行ならびに同免脱の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 本井巽 中村行雄 小田耕治)

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